C'est la vie!

 

 高校受験生のあたしは、片思いしてる男の子を想いながらも勉強に費やす日々。来る日も来る日も勉強、勉強、勉強!「もういやっ!!」ってなるけど、でも憧れの彼と同じ高校行くため頑張る!!・・・・・・けど、でも不慮の事故から幽霊になっちゃった!?

しかも何故か憧れのあの彼も一緒に幽霊!?

成仏しようと憧れの彼と一緒にゴーストライフをはじめるけど、大御所幽霊のクロウさんと、謎の美人ゴースト・ブリトニーの登場に、ハッキリ言って成仏どころじゃない!?

どうなるあたしの未来!

 


  • ラブ甘度    ★★★★☆
  • ピュア度    ★★★★☆
  • コメディ度   ★★★★☆
  • ゆる度     ★★★☆☆


間違いから始まる恋

 

***間違いから生まれた小さな恋*** 

 

 

 

 


 

昼休憩を過ぎると弁当を食って腹が満たされるから猛烈に眠気に襲われる。


この日も俺は五限目になると机につっぷして、これまた小難しい数式を熱弁する教師の説明を子守唄に、目を揺らしていた。


トントン


唐突に肩を叩かれ、重い瞼をこじ開け振り返ると後ろの席のツレが


小田切おだぎりにって。御子柴みこしばが」と斜め後ろの席を目配せ。


渡されたのは小さく折り畳んだメモ、に見えるが案外凝った折り目がついてて、ハート形になってる。メモと言うよりも“手紙”?


何だぁ?


俺はその小さく折りたたまれた手紙を開き、そして目を開いた。


紙面に走る小さくて丸っこい字。





“大好きです



    みこ”




――――は?


こ、これは……


ラブレターとか言うヤツ?


いや、待て待て待て……御子柴が俺にラヴ??


そうには見えなかったケド。


もはや、今この瞬間眠りの沼にいざなおうとしていた睡魔が飛び去り、


俺はその手紙を握ったままこーちょく。




 

この手紙をどうしたらいいのか分からず、5限目、6限目をやり過ごし、しかし彼女だってきっと返事を待ってるだろうから、俺は帰りのホームルームが終わって、帰り支度をしている御子柴に近づいた。


御子柴は可愛い部類に入ると思う。あんまり喋ったことないけど清楚でおしとやかなイメージ。俺は結構そゆうの好きだったり。


「み…こしば!」


御子柴は淡い栗色のポニーテールを揺らし振り返る。目が「何?」と物語っている。


いや、『何?』じゃなくて


「これ、お前……俺のこと……」


何だか急に気恥ずかしくて顔を背けて手紙をずいと出すと


「え!?何で小田切が!」


と御子柴は素っ頓狂な声を挙げ、そして慌てて手紙を奪う。


何で、って俺が聞きたいんだけど。


「これは!幸田くんに渡ったんじゃ!?」


え…幸田こうだ?てか違う!?


確かに幸田は俺の一つ前の席だ。しかも学年イチのイケメンでモテ男。噂に寄ると女子の間でヤツのファンクラブがあるとか、どうとか…


ぅわ!俺、サイテー


自分がやらかしたことが恥ずかしすぎて、てっきり御子柴が俺のこと好きだと思って。浮かれて……


てか浮かれてたの、俺??


まぁ女子に告白されること自体はじめてのことだからな。良く考えたら御子柴が俺に……なんてことないよな。



てか、御子柴ぁ!俺の青春を返せよ!



P.2


 

「てかイマドキ手紙かよ。もっと他に…メールとか伝え方色々あんだろ?」


俺は自分がやらかした恥ずかしさから、ちょっとつっけんどんに言って顔を逸らすと、御子柴は白い頬をバラ色に染めて


「だって……連絡先知らないんだもん」とボソッ。


「ケー番も知らずに告ろうとしてたワケ?」呆れて言うと


「何よ。あんただって私のケー番知らないくせに返事しようとしてたくせに」


ま、まぁそうだよな。しかも俺もまんざらでもなかったしな。


「とにかく、それ幸田に渡せよ」


ぶっきらぼうに言って「帰るか、バカバカしい」自分がやらかしたことがな。と鞄を持ち上げたときだった。


ガシッ!


御子柴の思いのほか強い力で俺の腕を握られ


「ね、ねぇこれあんたから渡してくれない?幸田くんに」


「はぁ?やだよ。俺が他人の恋愛の橋渡しとかガラじゃねーし」


「そこを何とか!」


「てか幸田とそれほど親しくねーし」


「お願い!」


と、やり取りが続いて俺は根負け。御子柴って俺がイメージしてたのとちょっと……ていうかだいぶ?違う気がする。それだけガッツがあるなら幸田に直接ケー番聞けばいいじゃねぇか。


何で俺キューピッドみたいなことやらされなきゃいけないわけ??


 

P.3


 

と、まぁ結局引き受けるハメになっちまったんだけど。



でも幸田に何て言って渡しゃいいんだよ。



「これ、御子柴から」とか?



あれこれ考えている内に結局一週間経ち、その手紙は俺の元で止まっているワケだが。



その一週間、御子柴の「ね、渡してくれた?」攻撃にやられてダメージ100の俺。



あれ??



俺、何でダメージ受けてんの?



最初は手違いとは言え幸田宛の手紙を俺が受け取ってしまったが、そのときはそれほど意識してなかったのに、御子柴から進捗を聞かれる度に、胸がズキズキ痛む。



何で……?



しかしチャンス(?)は思いがけないときにやってきた。



それは体育の授業の前、体操着に着替え終わった俺は当日施錠係で更衣室の施錠をしようとしてたところ、幸田が滑るように更衣室に入ってきた。



「ワリ、小田切!ゼッケン忘れた」



幸田はロッカーの中をごそごそまさぐっていて、ゼッケンは授業でやるバスケのために必要だったから取りにきたんだろうな。体育教師はイマドキ珍しい熱血タイプで忘れ物をするとグラウンドを走らされる。



「あ…幸田、そいやさ~」と声を掛けたが



幸田はついでと言う感じにスマホを見て「ヤッベ、ミカに返事するの忘れてた」と一人ブツブツ。



「ミカ?」思わず聞くと



「あ、うん。隣のクラスの相川、あいつと付き合ってんだよね、俺」と幸田は自慢げ。



相川はこの学年イチ可愛いと噂の女子で、狙ってる男がわんさかいる。



「え、そう」



そう答えるしかできない。



くっそ!幸田と相川、美男美女で超お似合いなんですけど!!





結局、御子柴の手紙は渡せずに居た。





この事実を知ったら―――御子柴はぜってぇ傷つくよな。泣くかもしれない。



泣かせたくないな。



それを考えると胸の奥がズキズキと、一番痛いところを突かれているような。そんな気持ちになった。

 

 

P.4


 

「ね、幸田くんに手紙渡してくれた?」と例の御子柴の攻撃に、今日ばかりは何も言えない。



「あー……うん」と曖昧に返事を濁すと



「……そっか。幸田くんは何て?」



と御子柴が少し不安そうに表情に翳りを見せる。



何ていゃあいいんだよ。あいつ付き合ってるヤツいるよ?



なんて軽々しく言えないよな。







「その前に、これ俺から」







俺は御子柴が作った手紙と同じ折り方で作った手紙を御子柴に突きつけた。



御子柴が作ったようにきれいには折れなかったが、それでも精一杯気持ちを込めて折った。



内容は






“幸田なんてやめて俺にしろよ。




好きだ、御子柴





         小田切”





御子柴はその場で、手紙をそっと開ける。



てかこの場で開ける!?



俺は一人あたふた。



その文字を見て、御子柴の目が見る見るうちに開かれていく。



御子柴は慌てて鞄からペンを出すと、その手紙の端に何かを書いた。



「今度は間違いなんかじゃないから」



そう手渡されて、御子柴は顔を真っ赤にさせてパタパタと走り去っていく。



何だ?やっぱ俺、間違えた??



とちょっと不安になりながらも開いた手紙に







“あたしも。



あたしもいつの間にか小田切のこと好きになってた”







と書かれていて、



え?




ぇえーーーー!!!?




走り去ろうとしていた御子柴がその歩みを止め、ポニーテールを揺らして、ふと振り返る。



「一緒、帰る?」



「あ、ああ……」



俺は手紙の端にさらに書き込みをして、それを胸ポケットに仕舞いいれた。





“大好きだ”






~END~